【 Episode 6 】

いつでも出発できるように、

長女は、すでに保育器の中に入っていた。

たまたま向こうを向いてしまっていたので、

顔は見えない。

「赤ちゃん、触ってあげて。」

保育器の横の穴から、

恐る恐る手を伸ばして

長女の腕に、そっと手を置いてみた。

その瞬間。

私の両目から、涙が溢れ出してしまった。

産後直後の体調やメンタルに差し障ると

いう気遣いであるのは、頭の片隅では

わかッていた。

わかっていたけれど…。

ほんの数秒で、我が子から、半ば強制的に

引き離され、病室に戻されてしまった。

私の悲しみは、余計に深いものになった。

家族が増えて、

喜びに満ちる日になるはずだったのに。

いろいろな感情が入り混じって、

忘れることのできない記憶が刻まれた

一日となってしまった。

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