全て 無くなりました

子供の頃に大切にしていたものについて聞かせてください。 それはどうなりましたか ?

小さいころ、テレビの向こうに

ピンク・レディーのお二人が現れた。

当時としては、斬新な衣装と

踊りながら、歌う姿。

あっという間に、虜になった。

お小遣いを貯めては、

商店街の雑貨店に足を運んで、

袋入りのブロマイドを、集めていた。

ある日、学校から帰ってきたとき。

ランドセルを置きながら、

ふと机の上を見て、愕然とした。

大事に飾っていたブロマイドに、

“ オナラ ” のような、落書きされていた。

真っ赤な油性マジックで…。

笑えないよ。

母の仕業だった。

怒りが頂点に達して、感情すら失っていた。

子どもながらにも

( 冗談だとしても、程がある…。) と思った。

一気に、母への

“ 人としての信頼感 ” を失った。

怒りをぶつければよかったのだろうか ?

例え、母に向かっていったとしても

そのブロマイドが、元に戻らないことは

子ども心に、わかっていた。

母が、謝ってくれないことも。

そのブロマイド、捨てることもできずに

しばらく、そのままにしておいた気がする。

そして、私が成人したころ。

大人になるにつれて、母との関係性は

悪化していた。

ある晩。家の中で母と二人きりのとき。

ある諍いをきっかけに、

母に包丁を向けられた。

非現実的な場面で

( あぁ、私、明日の朝の新聞や、ニュースに

出るんだろうなぁ…。) などと、

冷静な振りをしていた。

そして、隙を見て、家を飛び出した。

二つの生命を守るために。

その日以降、私の物は全て、捨てられた。

本、レコード、衣類…

まるで、それまで存在しなかったかのように

思い出の写真の一枚すら

私の物は、一切無い。

母が亡くなった後に出てきた、着物類。

それはきっと、私が袖を通すことを夢見て

母自身が、こっそり購入したものと思う。

それでも、目の前から排除した物たちとは、

線引していたのであろう。

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